一途な御曹司に愛されすぎてます
 でも私をここまで驚愕させている原因は、この真っ白なリムジンではなくて、その前に佇んでいる男性の存在だった。


 唖然と立ち尽くす私の耳に、背後の女性社員たちのヒソヒソ声が聞こえてくる。


「ねえ、あの人モデル? それとも俳優? ここでドラマの撮影でもあるの?」


「まさか。こんな田舎の外れの中小企業でドラマの撮影なんかするわけないでしょ?」


 彼女たちの注目の的になっている人物は、モデルばりに均整のとれた彫像のような体躯を、明るい紺色の高級スーツに包んだ美青年。


 艶やかな黒髪と、彫りが深くて華やかな顔立ちは、相変わらず見惚れるほどに美しい。


「……階上、さん?」


 恐る恐る彼の名を呼ぶと、リムジンを従えるように立つリゾート業界の王子様が穏やかに微笑んだ。


「矢島様、お久しぶりです」


 あまりにも意外な光景すぎて、夢でも見ているみたいに頭がボーッと霞んでいる。

 でもこれは夢でも幻でもないよね? 本当に彼が目の前にいるんだよね?


「なんで? なんで階上さんがここにいるんですか?」


「決まっているでしょう? あなたが恋しくてたまらなくて、追いかけてきたんですよ」


 彼の言葉に反応した社員たちが一斉にどよめいて、呆然としていた私は我に返った。
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