一途な御曹司に愛されすぎてます
 シャワーを終えて部屋に戻り、ベッドルームを覗いて彼が起きていないことを確認してから、リビングで手早く身支度を整える。

 手持ちのメイク道具で軽く化粧を済ませ、ドレッサーの三面鏡に映った自分の顔と見つめ合った。


 これからどうしよう。このままリビングにひとりでいるのも手持ち無沙汰だし。

 かと言ってベッドルームで彼が起きるまでじーっと寝顔を見ているというのも、ちょっと間が抜けている。

 なにより、ああいうことになった後で彼と顔を合わせるのが、すごく恥ずかしい!


 体を重ねて迎える初めての朝、彼はどんな顔で、どんな声で、なにを言ってくるだろう?

 想像するだけで照れくさくて、心臓がドキドキして、たまらず両手で顔を覆って悶絶してしまった。

 胸の奥でフワフワと蝶が舞っているような、この高揚感。恋愛特有の気恥ずかしさを、こうしてまた味わえることが嬉しい。


 あ、そういえばディナーの席で階上さ……悠希さんが、このホテルには素敵な中庭があるって教えてくれたっけ。

 彼が目覚めるまで散歩でもして、ちょっと気を落ち着かせようかな?


 私はベッド脇のテーブルに『中庭を散歩してきます』と書いたメモを残し、そっと部屋を出た。

 小路の両脇に建つ真っ白なヴィラの壁が、初夏の朝日を反射する。

 眩しさに目を細めながら本館に戻り、南国風の観葉植物や切り花がセンスよく飾られたロビーを横切って、中庭に出た。
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