一途な御曹司に愛されすぎてます
 目を丸くして、それから私も思わず吹き出した。

 康平一家に悟られないよう、ふたりで懸命に笑いを噛み殺しながら、肩を揺すって足早に歩く。


 私にとって消すことのできないコンプレックスの象徴だった存在を、こうして笑い飛ばせることがとても嬉しい。

 悠希さんのおかげだ。彼が私を、ずっと縛りつけていたものから解放してくれた。


 この人はどんなときでも私の隣にいてくれて、どんなに歩きにくい道であっても、こうして手を繋いで一緒に歩いてくれる人だ。

 この人こそが私が探し求めていた人なんだ……。


―― グウゥ、キュルル。

 愛と感動を心の底から味わっていたら、いきなり私のお腹の虫が鳴った。

 ひえぇ! なにもこんなシーンで自己主張することないでしょ!

 恥ずかしくて頭から湯気が出そうになっている私を見ながら、悠希さんが楽し気に笑う。


「すぐに朝食を用意させるよ。でもその前にふたつ条件がある」

「条件?」

「今日一日、キミはずっと俺の隣にいること。そしてこの先もう二度と、俺の前からいなくならないこと」


 彼の幸せそうな笑顔を見上げる私の胸に、熱い想いが込み上げた。

 もちろん。それなら望むところだ。

「はい!」

 私は笑ってうなづいて、彼の大きな手を強く握り返した。




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