一途な御曹司に愛されすぎてます
「でもそれはもうすでに、学校給食とかにも応用させているわよね?」


 営業本部勤続三十余年の小島次長が、手元の紙資料とタブレット画面を交互に見比べながら私に質問してきた。

 シンプルな白い会議用テーブルの周りに並んだ十脚ほどの椅子に、会社のブレーンである営業本部の面々が座っているけれど、女性は小島次長だけだ。

 地元ではそれなりに大手の企業なわりに、老舗店の体質というべきか、女性の責任者はかなり少ない。


「はい。ですからそのノウハウを、小売り店舗でも有効に活用すべきです」


 我が社では、業務用の専門食材を一般の消費者向けに販売するスーパーも経営している。

 一般のスーパーではちょっと珍しい、プロが使用する業務用食材や調味料を購入できる点が好評だ。


「お年寄りの咀嚼度合いに対応したユニバーサルフードや、小学校の低学年向けにアレンジした給食用食材やメニューは、一般家庭にも需要があるはずです」


「そうねぇ。最近じゃ親の介護をしている人や共働きの夫婦がほとんどだものね。季節毎の行事食も、アレルギー対策メニューも忙しい主婦の味方になるわ」
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