一途な御曹司に愛されすぎてます
「さあ、俺の名前は?」


 私の耳に唇を寄せ、ゆっくりと熱い吐息を吹きかけながら彼は促した。

 甘い電流に似た痺れを感じて、押さえつけられた体をビクリと震わしながら大きく喉を反らす。

 その感覚はまるで抗えない魔法のようで、私は無垢な少女みたいに素直に彼の名前を口にするしかなかった。


「悠希(ゆうき)……さん」

「よくできました」


 からかいの混じった響きが耳をくすぐり、また甘い電流が私の体を走る。

 身をよじり、声を出すまいと固く閉じた唇のすぐ間近に彼の息を感じて、私は慌てて顔を逸らした。

 このままじゃキスされちゃう。それはなんとしても阻止しないと。


「ま、待って。名前を呼べばお仕置きはしない約束でしょ?」

「これはお仕置きじゃない。お利口なキミへのご褒美だ」

「そんなのずるい。待っ……」


 言葉を封じられた唇が、彼の熱で覆われた。

 ああ、どうにか拒否し続けてきたのに、ついに触れ合ってしまった……。

 観念すると同時に、体から抵抗の力が抜けていく。
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