一途な御曹司に愛されすぎてます
「ああ、そういえば息子から聞いていましたわ。ただの一般事務でしたわね」

 明らかに見くだしている口調がズシンと重く胸に響いた。

『一般事務でなにが悪い』と、強く言えない自分が不甲斐ない。

 だって、康平の地位や職業に対して一番引け目を感じ続けてきたのは、私自身だから。

 唇を噛んで黙り込んでいると、お母さんが自分の胸元に手をやり、誇らしげに背筋を伸ばした。


「私が着ているこの着物の種類、おわかりになるかしら? うちの嫁になりたいと言うのなら、さすがにこれくらいは答えられるわよね?」


 いきなりの質問に途方に暮れた。

 私の着物に関する知識なんて、留袖とか、訪問着とか、付下げって言葉を耳にしたことがある程度だ。

 答えられない私を小馬鹿にした顔で眺めていたお姉さんたちが、小さく笑う。
< 37 / 238 >

この作品をシェア

pagetop