一途な御曹司に愛されすぎてます
「教えてあげるわ。これは『紗袷(しゃあわせ)』というのよ」


「二反の生地をあわせて、下の柄を上の無地の紗から透かせたものなの。この時期だけ着ることができるとても贅沢な着物なのよ」


「やだ、お姉ちゃん。そんなこと言っても、この人はきっと袷や単衣の区別もできないわよ」


 綺麗なネイルを施した指先に隠された赤い唇から、嘲笑が漏れる。

 たぶん今の私は、悲愴を絵に描いたような表情をしていることだろう。

 もう噛みしめる唇の痛みすら感じない、惨めな私を半目で見据えたまま、お母さんが冷酷な声で決定打を下した。


「ここまで言えばさすがにおわかりでしょう? あなたはうちの嫁に相応しくありません」


 大きな手の平で、頭から思い切り叩き潰された気がした。

 すぐ隣に座っている康平は、お母さんたちに反論するでもなくただ黙って私を見ている。

 私は小刻みに身体を震わしながら、懸命に心の中で叫んでいた。

 ねえ、どうして? どうしてお母さんたちになにも言ってくれないの?

 どうしてあなたは私を守ってくれないの!?
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