一途な御曹司に愛されすぎてます
 こうして私に気を遣わせまいとしてくれている気持ちが、とてもありがたい。

 ひとりで旅行に行く申し訳なさはあるけれど、ここは彼女の心意気を受け取るべきだろうと思って、今こうして送迎バスに揺られている次第だ。


【私の幸運全部をつぎ込んで当てた旅行なんだから、淳美にも旅先で素敵な出会いが待っているかもよ?】


【残念ながらそれはなさそう】


 送迎バスに同乗している人たちは、年齢は二十代から五十代くらいのご夫婦かカップルばかり。

 この送迎バスというのがまた素晴らしく豪華なバスで、通路側の木製パネルの仕切りのおかげでプライベート感があって安心できる。


『ゼログラビティシート』とかいう舌を噛みそうな名前のリクライニングシートは、重厚感のあるソファーみたい。


 せっかくの機会だからと思って用もないのにトイレに入ってみたら、まるでホテルのパウダールームみたいに素敵な内装で、しかも着替えができそうなほど広かった。

 バスのトイレごときに感動しちゃうところが庶民感丸出しでちょっと恥ずかしいけれど、だからこそ旅への期待は増すばかりだ。
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