イジワル御曹司ととろ甘同居はじめます
「さっきから言いたい事ばかり言って。建一さんに信君の何が分かるんですか。信君は建一さんみたいに意地悪じゃないし、凄く優しいです。小さな時からいつも私を妹の様にかわいがって――キャッ!」

話の途中で建一さんが私の腕を思い切り自分の方へ引き寄せた。

「何が、妹だ。所詮赤の他人同士じゃねーか。あのな、血が繋がってなけりゃ何だって出来るんだよ」

怒り、切なさ、そして迷い・・・そんな目で私を見ているようだった。

だが気がつけば私は建一さんにキスをされていた。

何で?あんな目をした建一さんが私にキスをするの?

なんでこんなに苦しくなるの?

何でこんなキスするの。

「んっ…んっ…ん!」

私は建一さんの胸を思いきり押した。

唇が離れたと同時に視界がぼやける。

「なんで・・・こんなことするんですか?」

もっともっと言いたい事は沢山あるのに整理が付かない。

だけど建一さんはなにも答えてくれない。

「なんでこんなことするの?」

悔しい、私はこんなキスが欲しかったんじゃない。

それなのに私の心臓は早鐘を打っていた。

嫌いになれるならいっその事、嫌いになりたいのに、こんな心のないキスをされても嫌いになれないなんてどうかしてる。

私は建一さん・・・いや兄の言葉を聞けぬまま自室に入ると泣いた。



この涙の理由がわからないままとにかく私は泣いた。
< 155 / 225 >

この作品をシェア

pagetop