ファインダー越しの君へ
「え?何?」


「何じゃないわよ、フォトコン、宇佐美先輩大賞でしょ」


「塁の写真で」


先輩と一緒に居られる嬉しさで忘れていたが、そもそもの目的はフォトコンテストに応募するための写真を撮ることだった。

そのコンテストの結果が出たらしい。


(大賞?すごい。先輩、スゴすぎるよ)


「いいなぁ、宇佐美先輩と2人きりでしょー。私も撮られたぁい」


「ほんとほんと、ドキドキするシチュエーションなんでしょー」


盛り上がる級友たちをよそに、塁の心は冷静だった。

そんなものじゃない。先輩はただ真剣に、本気で写真と向き合っている。

私が先輩への恋心に気づいても、気安くキャーキャー舞い上がれる雰囲気ではなかった。

夏休み最後の週は、声をかけられるたび、膨れ上がる恋心を抑えるのでいっぱいいっぱいだった。

そんな中で塁が思っていたのは、真剣な先輩の思いに応えられる自分でありたいということだった。
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