【短】残月、残滓、残照、残恋。そして、残愛…。
「彩雪?…彩雪ー?」


「気安く呼ばないでよ」


「なんで?」



今、なんでって言いました?

こいつ…。

マジで、訳分かんないけど。

てか本当に、意味分かんない…。



「ソウは、あほだから、私の気持ちなんか分からないでしょーね」



心の中で3回バーカと唱えながら、目線を合わせてそう言ってやった。



ぱちくり




ソウは、私の言葉に対して、2回程瞬きをしてから、にっこりと微笑む。



「さ、帰ろ?」


「はぁ?私の言ってること、分かんないの?1人で帰れって……ちょっと、何よ、この手…?」


「ん?なんでしょう?」



しっかりと、いつの間にか楽屋に入り込んで来ていたソウに腰をホールドされて、不覚にも私の胸が高鳴った。



「放して」


「やだ」


「放せってば、このチカン!」



ぎゅうっと横から抱き締められる形になって、その至近距離に私の頬が紅くなる。



ソウは何時になくご機嫌だ。



「んふふー。彩雪はやっぱり可愛いのな。さっ!早く帰ろ?遅くなるから」


「…ちっ」


「女の子が舌打ちしなーい!」


「けっ」



私はその後、ずるずる引き摺らせるようにして楽屋を出る羽目になった。

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