【短】残月、残滓、残照、残恋。そして、残愛…。
燻って残った、想いの燃えカスを、自分でどう処理して良いのか分からず、地団駄を踏み鳴らす子供な私。
恋がこの心の中に響いて離してくれない。
ずっと”此処”に留まって離れていかない…。
どれだけカメラの前で妖艶に大人を演じてみても、こんな私をソウが好きになってくれるはずがない。
…私は、ソウの”本命”なんかじゃない、んだ…。
すん、と鼻を啜って空を見上げた。
透き通るような月が暖かな色合いの光を地上に落として佇んでくれれば、良かったのに…。
今夜はもう、少し歩いただけでずぶ濡れになる程の雨。
駅に向かいながら、私はこれからどうしようかと真剣に考えた。
そもそも、スカウトで入ったこの世界。
そこで成功して、プロになって自信もついた。
だけど…。
それはきっと傍にいつもソウがいてくれたからだ…。
駅の看板に堂々と飾られた駅張りを見て、余計に胸が苦しくなった。
そこに映っている私は、眩しいくらい心から幸せそうに笑ってる。
それを見て、ソウを失ったら私はもう、こんな風には笑えない…こんな風に生きてはいけないんだ、と思った。