【短】残月、残滓、残照、残恋。そして、残愛…。
私はそこまで吐き出すと、付けていたシートベルトを乱暴に外し勢い良く車のドアを開けた。



「彩雪!」


「あんたの顔なんて、もう二度と見たくない!」



バタン!



ヒステリックにそう叫んで、ドアを閉めると履いていたミュールのかかとを掻き鳴らして歩き出した。

背中で追い掛けてくるなオーラを全開に発しながら…。



そうだ。

ソウには”本命”がいる。

あの時、凄く幸せそうにアシスタントと話してたじゃないか。


『そうなのよ〜。愛してる。どんな奴より、オレの本命はそいつしかいないから…』


その時のソウの笑顔がひどく優しくて…運命って言うのは、なんて残忍なことをするんだろうかと、そう思ってた、あの日。


それなのに、なんでこんな…。

なんで、こんなにも私は…ソウが好きで堪らないんだろう…。
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