アナスタシア シンデレラ外伝
 やめて。やめて。どうして?どうして私がこんなことされるの?
 少年達の下卑た会話がうつろに聞こえ、アナスタシアにはもう何がなんだか分からない。彼女は目を閉じて身を硬くした。このまま全てが終わるのを待つしかないのだと悟ったそのとき、ふと優しく抱き寄せられるのを感じ、目を開けた。

「ごめん。遅くなって。」
 そういった少年は手早く自分の上着を脱ぐと彼女を包み、優しく抱き寄せてくれた。気付くと押さえつけられていた腕が自由になっている。
 この少年も市で見かけた事はあった。どこの子かは知らないが。
 何が起こったのか当たりを見回すと、1人の憲兵が剣を納めるところで、クラウス達はもういなかった。この少年が憲兵を呼んできてくれたのか。

「大丈夫かい?」
憲兵が尋ねた。アナスタシアは黙って頷いた。
「家まで送ろう。歩けるかな?」
アナスタシアは立ち上がった。

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