夜の庭園ー少女たちの消える庭ー
「......だからね、昨日あの子から話を聞いた時、驚いたんだよ。
今更になってどこからそんな話を持ち出してきたんだろうって。
あの子、誰に教わったと言っていた?」

「わかりません。教えたらダメなんだって言って、教えてくれなかったから」

私は正直に答えました。私たちが生まれる前に流行った噂話を容子に教える人の心当たりもありません。

校長先生は「そうか」と頷くと、気持ちを切り替えるように明るく言いました。

「まあ、世の中にはそういうやるせない事件があって、そういう事件には心無い噂がついて回る。
君はそんなものに惑わされない大人になりなさい」

暗くならないうちに帰るんだよ、と私の肩を叩き、校長先生は図書室を出て行きました。

私は今聞いた話のざらついた後味を持て余したまま、しばらくその背が消えた廊下を見つめていました。





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