ラヒの預言書

その一行に付いて歩き出すと、神殿からはどんどん離れ、初めて通る石畳の通路を進んでいた。


(一体何処に続いているのだろう?こんな隠し通路がこの神殿にあったなんて.......)


行き先を聞いてみたかったが、終始無言のその一行には話し掛け辛く、黙って歩いていると、目の前に立派な石の塀が出てきた。

相当な名家なのだろうとキョロキョロしていると、前を歩いていた若い男が何の前触れもなく急に振り向いた。


「っ!!」


「少しの間、此方に入れ」


「えっ?」


見ると男は自分のたっぷりとしたマントをソルに向けて少し開いてみせた。


「誰かに見られたくない。急げ!」


「うぐっ!!」


ぐっと肩を抱かれ、応える間もなくマントの中へ包まれる。

背の高いこの男のマントに包まれると、ソルの身体はすっぽりと隠れた。

間近で見る男の服もかなり高級な物の様で、咄嗟に掴んだ服からは、うっとりするような良い香りがして何だか落ち着かない気持ちになった。

他人にここまで近く触れた事など、ソルにとって育ての親のトリノ夫婦くらいだった。

そのまま隠れて塀の中の道を暫く歩いていると、いきなり甲高い耳障りな声が聞こえてきた。


「ご機嫌麗しゅう、キルバル殿下!」


(えっ?殿下??)


「此れは此れは、ジュロ叔父上ではありませんか?最近よく宮殿に参られますね?」


「えっ?ええ、まぁ、所要がありまして…。それはそうと、キルバル殿下も神殿に参られたとか?随分と熱心に何を御祈りなさるので?」


「ハハッ!何をとは聞くまでもない!もちろんロドゥラの繁栄と民の幸せを神に祈っているだけです。どうやら私は母親に似て信心深い様だ」


見なくても分かる、この感じは明らかに敵意を持っている口調だ。



< 15 / 90 >

この作品をシェア

pagetop