出稼ぎ公女の就活事情。
 目覚めは最悪だった。

 ベッドではなく板張り床の上にそのまま転がされていたらしく身体の節々が痛むし、両手は後ろ手に縛られているらしく動かせない。
 しかも荒縄のようなザラザラとしたもので縛られているようで、チクチクヒリヒリする。

 足は縛られてはいなかったが、動こうとするとガクンと途中でせき止められた。
 どうやらご丁寧に手首を縛らった縄の端を何か重いものにくくりつけてくれているらしい。

 ズリズリと這いずって限界まで首を回し背後を確認すると一メートルほどの縄の片端で手首を縛られ、反対側を壁に埋め込んだ突起にくくりつけていた。
 突起からはもう一本縄が伸びていて、その先にはうなだれて座り込む小さな背中がある。

「……モンタさん?」

 これだけゴソゴソガサガサしていて、わたしが起きたことに気づかないはずはあるまい。にもかかわらずわたしに背を向けたモンタさんはピクリともしない。
 何かに凭れもせずに座っていられるのだから、意識がないわけでもないだろう。

「モンタさん?」

 背中だけを見る分には新たな怪我が増えている様子はなかった。があくまでも見えている部分だけのことで、正面に回ってみるとどうだかはわからない。

 モンタさんはわたしと違い、両手を縛られてはいないようだ。
 尻を床につけて膝を抱えて座っている。

 突起から伸びた縄はモンタさんの両手に抱えられた右足首にくくられているようだ。

ーーあれだとほとんど意味がないんじゃ?

 両手が自由な状態ではすぐに解くことができるのでは、と思って、ズリズリと這いずりモンタさんに近づいていく。

「モンタさんっ」

 ああこっちを向いてくれればいいのに。
 縄が中途半端に短いおかげで背中と首を目一杯グイグイ伸ばしてようやく斜め後ろから左半身が見え隠れする程度。

「……モンタさんってば!」

 縛られて行動範囲も阻害されている状況で外に見張りがいるのかは不明だが、少なくとも建物の中には何日かの人間はいるはずだ。
 あまり大きな声は上げたくないのだけれど、モンタさんが反応してくれないのだから致し方ない。

 と、わずかにモンタさんの肩が動いた。
 その時、ポタリとモンタさんの足下に何か、赤っぽい雫が落ちて、わたしは目をやった。





 

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