クールな国王陛下は若奥様にご執心
第一章
 穏やかな春の日差しが降り注ぐ。
 広い庭園には咲きかけの花の蕾がいくつも並び、淡い色の花弁を覗かせている。
 まだ昇ったばかりの太陽の光が、穏やかにその可憐な姿を照らしていた。
 花に囲まれた庭園の中に、複数の人影がある。
 ほっそりとした白い指が花の蕾に伸び、優しく触れた。もうじき咲くだろうその花に微笑んだのは、満開の花のように美しいひとりの少女だった。
 淡い薄紅色のドレスに身を包み、長い金色の巻き毛をそのまま垂らした少女の姿は、まさに花の妖精のように可憐で美しい。朝露を含んだ新芽のように潤んだ緑色の瞳が、真っ青に澄み渡った空を見上げる。
「今日も、とても良い天気になりそうね」
 柔らかな声が響く。
 少女に付き添っていたふたりの女性は、彼女の嬉しそうな言葉に微笑んで頷いた。
 彼女は大陸の西側の位置する小国、レスレイラ王国の第二王女リーレ。その可憐な容姿と優しい性格から誰からも愛され、慕われる少女だった。
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