ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
午前中はそれほど感じなかったが――。

雨で遅れたスケジュールを取り戻そうとしているのか? 副社長の視察があるからか? 午後の作業がいつになくハードに感じた。

「山本! 休み明けだっていうのにチンタラしてんじゃないぞ!」

フラフラとおぼつかない足の私に、現場監督の喝が飛ぶ。
ごもっともです。でも……と心の中で言い訳をする。

確かに雨で先週一週間仕事はなかった。けれども子供を持つ主婦に休みはない。

休み中に瑞樹が熱を出したのだ。季節の変わり目で保育園でも風邪が流行っているらしい。それを貰ったようだ。

熱はかなり高く三日三晩徹夜だった。抱っこしていないとグスグス泣くからだ。

しかし、子供というのは実に現金なもので、熱が下がると途端に普段通り元気になる。そんな瑞樹は怪獣だ。

看病疲れでクタクタでも、彼に付き合い朝から晩まで遊んだ。だから、疲労が溜まりに溜まっているのだと思う。

「山本、お前、体調が悪いのか?」

常爺さんが声を掛ける。

「顔が赤いぞ、熱があるんじゃないのか?」

そう言えば……昼少し前に悪寒がした。食欲もあまりなかったし……瑞樹の風邪を貰ったのだろうか?

「大丈夫です」と返事をしながらも、帰ったら市販の薬でも飲んでおくかと仕事を続けた。
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