ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「はぁ」と一応返事をするが、私としては唯我独尊的な貴方の態度の方が、よっほど気に食わない。瑞樹に対する接し方とえらい違いだ。

「自分を卑下しているつもりはありませんが、そう聞こえたなら無意識下の自分がそう思っているのでしょうね」

ふて腐れながら言う。

「僕は誰彼なしに側に置くことはしない。そんな僕がお前を側に置いているんだ。何を卑下する必要がある? それは僕に対する侮辱にも繋がる」

よく分からない道理だが、おそらく『僕が認めているのだから自分を貶めるな』とでも言っているのだろう。

それは、私を認めているのではなく、自分を認めているという現われでは? 本当に唯我独尊さんだ。

「お前が何を言おうと、今後、お前が僕の面倒をみることに変わりない」

傍若無人(ぼうじゃくむじん)! 暴虎馮河(ぼうこひょうが)! 奔放不羈(ほんぽうふき)! 次々に出てくる四文字熟語に我ながら感心する。

「私は副社長の足が完治したらお暇を貰います」

この際だ、キッパリ言っておく。

「ほほう、なら、一生かかっても無理だな」
「なぜです?」
「傷というものは目で見えるところにばかり付いているわけではない」

「ここ」と言って副社長が胸をトントンと二回叩く。
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