俺様外科医の極甘プロポーズ

「結局、壱也先生についていけば間違いはないってことじゃない? なんだかんだ言いながら、晴也先生はなにもしてないわけじゃん」

「ほんとそう! 結果出したのは壱也先生だし、しかも一緒に頑張っていただけると助かりますーなんて頭下げられたら、一生ついていきますって思っちゃわない?」

「わかるー! 悪役になりきってでも病院を立て直おそうとした男気がかっこよすぎるよ、壱也先生」

 ナースステーションでは朝からずっとその話で持ち切りだ。壱也先生の株は急上昇。“死神”だなんてあだ名がつけられていてことが嘘だったかのように、みんな恋するような顔で“壱也先生”と呼んでいる。おそらく語尾には特大のハートマークがついているだろう。

私としては複雑な気持ちだったけれど、ようやく壱也先生の誤解が解けてよかった。そしてなにより先生の評価が正当なものになったことがとてもうれしかった。

私は点滴の準備をしながらその話を聞いていた。すると田口さんが私の目の前までやってきて、静かに頭を下げる。

「先輩。ごめんなさい」

「田口さん?」

「花村先輩が正しかったんですよね。それなのに私、悪い奴の味方をする反逆者みたいな目で見てしまって本当にすみませんでした」

 反逆者とはまたずいぶんなことを言ってくれる。でも、ようやくわかってもらえてよかった。

「許してください」

「許すもなにも、初めから恨んでなんかないよ。だから頭を上げてよ田口さん」

 遠慮がちに顔を上げた田口さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「泣かないでよ。ほら、今日も元気に仕事しよ?」

 その日、私は外科病棟のスタッフたちと和解することができた。

全員から無視されるのはとても辛かった。けれど、いつも壱也先生が励ましてくれたから頑張ってこれた。逃げ出さないで本当に良かったと思う。

これは、神様からの数日早いクリスマスプレゼント。そう思うことにした。

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