高校生夫婦はじめました。
心の準備に時間を要したのは、単純に私に経験がなかったから。“ハジメテは痛い”っていう噂だけよく耳にするから、“痛い”ということはまず間違いなさそう。あまりの痛さにひどい顏を晒したらって思うと……正臣だって、ヒかないとも限らない。
何か良い対策はないかと考えた。お面を被るとか、正臣に目隠しをしてもらうとか。……びっくりするくらい頭の悪い案しか思いつかないので、自力で考えることを諦めた。思い切ってクラスの女子に相談してみようかとも考えたけど、そんなことをしたら絶対に“相手は!?”と問い詰められるのでそれもやめた。隠し通せる自信もないし、そんなことを相談していたことが正臣にバレてしまうのも恥ずかしい。
(もうなるようにしか……!)
くっ……!とやるせなさに唇を噛んでいると、背後から声がした。
「春瀬」
名前を呼ばれた瞬間、“ドキーッ!”と心臓が跳ね上がる。後ろを振り返ると、そこには教科書や筆入れを脇に抱えた正臣が立っていた。
人通りのある渡り廊下で、私は周りから不審がられないように普通の態度を心がけた。呼び方にも気をつける。
「とっ……時任、くん」