高校生夫婦はじめました。

食材費を真仁さんに出してもらって、代わりに私が調理する。料理をするのは元々好きだった。真仁さんと正臣が美味しそうに食べてくれるから、もっと好きになった。

「はぁ~……知佳ちゃんのカレーほんと好き……! 明日も食べられる幸せ……!」

大げさなくらいに喜んでくれる真仁さんに、私は照れて「カレーなんて誰が作っても美味しくできますよ~」と返す。そう言いつつも、“ほんとに上手にできたかな……?”と不安になって正臣の顔をちらっと窺う。


視線に気づいた彼はぶっきらぼうに言う。

「美味い」

テンションこそ低いけれど、顔を見ればわかる。不愛想だけど満足気なオーラ。
本当に美味しいと思ってくれているときの言い方に、私はやっと安心して頬を緩めた。

「よかった」



正臣の家で夕飯を食べる習慣は四年ほど続いた。顔を合わせる時間は短くても有り余るほどの愛情を注いでくれるお母さんと、一緒に夕食を囲んでくれる正臣と真仁さん。周りの人に恵まれて、中学から高校までの私の人生は充分幸せなものだった。



*



だけど先月――私の幸福な世界の半分は、突然崩れてなくなった。

お母さんが死んでしまったのだ。
珍しく早い時間に帰宅できると急ぎ足になっていた帰路で、交通事故に遭って。
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