最弱救世主とドS騎士
「母の言葉を聞いたんだ」
アレックスは私に共犯者的な笑顔をそっと見せてから、ふたりに語る。
「母の声が聞こえた。『この国を救いなさい。自分の為に国民の為に勇気を出して戦いなさい』そして……『愛してる』と」
王妃様が言ったエレベーターの中の言葉は、そんな内容だったのか。
「そんな言葉を聞いても、申し訳ないが無視していた。あんな強い敵には勝てない。犠牲は少ない方がいいと……でも、リナが剣を抜いた今、状況は変わった」
決意を持った王の言葉は力強く清々しい。
「その魔法の剣がリナにしか使えないのなら、リナが救世主で間違いない。リナの覚悟が欲しい。命を失う戦いに覚悟はあるか?」
アレックスにそう言われ
私は言葉が出なかった。
つい最近まで
ごくごく普通の一般事務員だったのに
命を懸ける戦いに参加するなんて
喉に何かペタリと乾いた物が貼り付いてるような、声が出ないし息苦しい。
「お前たちの意見は?」
アレックスがそう聞くと
リアムは「王様の意のままに。この命に代えても自分は王を守り最後まで戦います」と言い、シルフィンは涙を拭きながら「私の心はいつも王様と一緒です」と震える声でそう言った。
アレックスは微笑み
「シルフィン!領主たちをホールに集めろ。リアム、リナを部屋に連れて行ってから、会議に参加するように」
威厳のある声で命令してから
私の手を取り左手の薬指にキスをした。