そして、失恋をする
「あなたの愛した女性、私と顔が似てたのですか?」

「似てるよ」

似てるというよりも、そっくりだった。違うとしたら、性格ぐらいだ。千春はどんな深刻な状況でも、前向きな性格をしていた。僕は、千春のそこを好きになった。

「ざんねんです。あなたの好きな人に顔が似てなければ、私は死ねたのに………」

そう言って彼女は、振り向いた。

「名前、なんていうのですか?」

「………陸。西田陸」

彼女にそう訊ねられて、僕は自分の名前を言った。

「君は?」

「千夏………秋野千夏」

「千夏………」

僕は、彼女の名前を口にした。

顔もよく似ているが、名前も似ていることに僕の好きだった千春の姿が脳裏によみがえる。

「責任とってください」

「へぇ?」

「私の命を助けたのだから、一周間しか生きれない私と付き合ってください」

「はぁ ?」

とつぜんの千夏の申し出に、僕は驚いた顔をした。

「似てるんでしょ。あなたの好きだった人と、私が」

「それはそうだけど………」

拒否できない千夏の言い方に、僕は嫌とは言えなかった。

「じゃあ一周間、私の短い彼氏になってください」

「………」

僕は付き合うとは言ってないが、差し出された千夏の白い手を握った。
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