そして、失恋をする
「手紙の送り主は、父親からだった」

そう言いながら、窓に視線を向けて答えた千夏の瞳はかすかに潤んでいた。

「私に送られた手紙の文章には、こう書いてあったの。『千夏。すまないが、もう私は病院に来れない。ほんとうにすまない』って」

父親から送られてきた手紙の文章の内容を、千夏は淡々とした口調で僕に話した。

「その手紙を最後に、父と私は会ってないの」

「それって‥‥‥‥‥」

「私、お父さんに捨てられたの」

僕が思っていたことを、千夏が口にした。

「でも、両親は仲がよかったのでしょ。どうして………」

「仲がよかったら、父親は出て行ったりしないよ」

千夏はあっさりと、僕の言ったことを否定した。
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