そして、失恋をする
「でも後日、母親から教えてもらったの。『お父さん、同じ会社の女性社員との間に子供ができたんだって。だから、仕事は私ががんばるから。ごめんね、千夏』って」

「それって………」

「不倫だね」

軽い口調で、千夏がまた僕の思ったことを口にした。

これで、父親が出て行った理由がわかった。父親は、同じ会社の女性社員と不倫していた。そしてその女性との間に子供ができて、千夏と母親は捨てられた。

「お父さんのこと、うらんでる？」

「ううん、うらんでないよこうなることは、わかってたから」

白くて細い首を左右に振って、千夏はさっきと同じ言葉を僕に言った。

「どうして、そう思ったの？」

「癌になって、母親は私が入院している病院に来てくれていたの。けれどそのせいで、父親と母親の時間が少なくなっていたの。そして次第に、父親と母親の関係が薄れていき、気がついたときには夫婦関係はどうしようもなく壊れていたの」

「それで、父親は同じ会社の女性社員と不倫したってこと？」

小さな声で訊いた僕の言葉を聞いて、千夏はコクリとうなずいた。

ーーーーーー彼女の家庭は、僕の家とどこが似てる部分があった。父親の束縛から逃げるために、僕の母親はお酒に逃げた。気づいたときには、父親以外の人を好きになっていた。そして、両親は別れた。
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