そして、失恋をする
「人間の愛情なんて、いつかは冷めるものよ」

疲れた顔をして、彼女は悲観的な言葉を口にした。

彼女の考えには、共感できる部分があった。けれど、認めたくはなかった。認めてしまうと、千春がもし生きていても彼女と僕は別れることになるからだ。だから一度失恋をして、恋に消極的な僕には愛情が冷めるという気持ちは認めたくなかった。

「後、四日だっけ………?」

「なにが」

「後、四日しか生きれないんだっけ?」

「そうだよ」

僕の質問に、千夏は短く答えた。

「私は、今週の木曜日に死ぬんだ。だから陸君とも、もうすぐバイバイだね」

千夏は日に日に迫る自分の死に恐怖はないのか、それとも逃げ切れない死を受け入れてるのか、彼女は笑顔を浮かべて言った。その彼女の笑顔は、とても悲しそうだった。
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