そして、失恋をする
「かんちがいしないで、陸君。私、両親が離婚してよかったと思ってるのだから」

「えっ!」

「だって普通の家庭に産まれて両親が私のことを大切に育ててくれていたら、父と母の悲しい顔を見ないといけないでしょ。どうせ私は、親よりも先に死ぬのだから」

千夏のような考えは、これからも生きる僕の頭の中にはなかった。

明日も明後日も生きる僕と違って、千夏の余命は残りわずか。だから、親目線で考えて話したのだろう。

「そうでしょ」

僕に同意を求めてきた千夏だったが、その彼女の考えは共感できなかった。というより、共感したくなかった。共感してしまうと、こんな若い年齢で死を宣告された千夏の人生を肯定しまうからだ。
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