そして、失恋をする
「いいね、陸君は生きることができて」

かすかに潤んだ瞳で千夏に見つめられて、僕はどう答えたらいいかわからなかった。

ーーーーーー千夏の言うとおり、僕はこれからの未来を生きることができる。千夏の存在しない、この先の未来を生きることになる。

これから何十年後の自分の未来に、千夏もそして千春もいないことに悲しくなった。

「よくないよ」

「どうして?」

小さな声で言った僕の言葉を聞いて、千夏は細い首をわずかにかたむけた。

「前に好きだった人もこの世にはもういないし、千夏とももうすぐ会えなくなるのでしょ。だったら、生きれてもよくないよ」

好きな人のいないこれからの自分の未来を頭の中で想像すると、どうしても僕は悲観的な考えになる。
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