世界は鈍色に色褪せる。
プロローグ
 五百年前、一人の少女が実験台とされ、七人の研究者達の手によって、体の一部に機械が埋め込まれた。
 少女の生存確率は、極めて低く、不成功に終わるはずだった。
 研究者達は、誰一人希望を持たず、諦めかけていた。元々、誰も期待をしていなかった実験だったのだ。
 しかし、奇跡は起こった。
 少女の生命が途絶えようとした時、機械の中の、小さな“何か”が光り輝き、ドクンと脈打って動いた。
 それは、七人の研究者達にとって、大発見となるものだった。
 機械に命など宿るわけがない、そんな考えを覆すような、不思議な状況が起こった。
 動かなくなった心臓の代わりに、機械が細い糸となって、絡み合い、心臓を埋め尽くそうとしている。機械の、細かくなった糸が、血の代わりとなって、絡みついていく。
 そう、動かなくなった心臓の代わりに機械が動き始めたのだ。
 七人の研究者達は、目を丸くして、機械が糸を作っていく様を見ていた。
 愕然とした研究者達は、すぐにデータに残し、更に研究を積み重ねていった────新時代の幕開けだった。
 それは、人とロボットが共存する世界が始まる、一歩手前だった。
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