飴と傘
 萩岡係長は、職場ではさほど目立たない。

 ふっくら体形と温和な物腰が印象的な四十一歳、地味に総務の仕事をこなす毎日だ。一方クラブ活動では、卓越したトランペット奏者であり、素晴らしい編曲センスを発揮する。KSJCを人気ライブバンドへと押し上げたのは、係長の貢献が大きい。ちなみに私はドラム担当で、萩岡係長にスカウトされて加入した。

「『Rain』ふうとなると、飯倉さんには今回、ピアノに変更だね。人数的には四人でちょうどいいかな。ピアノ、チューバ、バリサク、トランペットで」

 KSJCはついこの間まで六人いたのだが、転勤その他で二人欠けた状態だ。ミズモリケントの今回の要望は、もしかして人数不足も配慮してくれたのだろうか。

 その日のうちにチューバ、バリサクからも返信があり、コラボが決定した。全員揃わないのは残念だが、またの機会があるだろう。

 今回も、ミズモリケントが作った曲はとてもいい。萩岡係長の編曲によって、きっと魅力は増すだろう。楽しみだ。

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