俺の彼女が一番可愛い!
「…バイト先でさ、まぁ義理チョコもらったわけ。」
「すごい!モテるんだ!」
「…モテてるのかはわかんないけど。で、それが理真さんの前で落ちてさ。」
「おお!」
「本当に欲しい人からもらってないって言った。…自惚れんなって思うかもしれないけど、落ちたチョコ見て、理真さんがびびった…みたいな顔してたから。」
「それで?」

 今なら綾乃の気持ちがわかる。恋バナを聞くのは楽しい。

「勘違いじゃないかって、訊いた。」
「え、俺のよりかっこいいじゃん!」
「どこがだよ!ここまでで好きとか付き合ってとか言ってないし。確認してばっかじゃん。」
「いやいや…何も考えずに好きとか言ってる方がかっこ悪くない?」
「それ逆にすごいと思うんだけど。」
「ってごめん!俺のかっこ悪い話はいいや!続けて。」

 ここで自分と比較してはいけない。

「勘違いじゃないって、言ってくれたんだよ。本命ってことで、いいかって訊いたらはいって。」
「うわー!それめちゃくちゃ嬉しいね!」
「だよな…その時の理真さんの顔がさぁ…真っ赤なわけ。」
「…うっ…わかる…なんだろうね、あの照れた顔の破壊力…。」
「すげーわかる…なんなんだよあれ…。」

 とても頭の悪そうな語彙しか出てこないが、あれこそが彼氏の特権というやつだと健人は思う。なかなか照れない綾乃が照れたときの、レア感たるや。ずっと腕の中に閉じ込めたくなる衝動に駆られる。

「…信じらんないくらい可愛い、ほんと。」
「わかるよ。ぎゅって抱きしめたくなるんだよね。」
「それ。気がついたら抱きしめてんだよな。」

 健人は深く頷いた。気がついたら抱きしめていたことなんて、数え切れない。
< 19 / 41 >

この作品をシェア

pagetop