俺の彼女が一番可愛い!
「照れてる~!」
「いいから!」

 焦って余計に赤くなる頬を見ると、余計に口元が緩む自分に気付く。

「あ~もう!寝る前まで我慢しておこうって思ったのに!我慢しないことにする。」

 そのまま腕を引いて、ぎゅっと抱きしめる。そしてゆっくりと腕から解放して、その赤い頬に手を添え、顔を上げてもらうことにした。
 目が合ったと思えば、気まずそうに目を逸らす綾乃に、健人は小さく笑った。

「…何笑ってんの。」
「だって可愛いんだもん。ほっぺちょっと熱いし。」
「誰のせいだと…!」
「俺のせいなんでしょ?それが可愛いんだよ。」

 そのまま頬を手で引き寄せ、そっと反対側の頬に唇を落とす。あまり頬にキスなんてしないから、健人の方も心拍数が上がる。
 目が合うと、またしても逸らされる。

「…綾乃ちゃん、不機嫌なの?」
「…違うけど。」
「なんで目逸らすの?」
「こういうときに気持ちを落ち着かせるには目を逸らす以外に方法がないんだよ。」
「気持ち、落ち着かせなくていいのに。」
「はい?」

 健人は再びぎゅっと抱きしめる。どうか、自分と同じ鼓動の速さになってほしいという思いを込めながら。

「たまにはドキドキしてほしいなってこと。」
「…なんか速くない?」
「うん。だって好きなんだもん。」
「…好きだよ、健人のそういうところ。」
 
 綾乃の腕が背中に回ったことを感じる。それが嬉しくて、ゆっくりと目を閉じる。

「はぁー…離れるの嫌だけど、お風呂入ってさっさとベッドに入った方がいいって思うことにする!」
「そうだよ!こんなことしてる場合じゃないし!はい!入りな!」
「はぁい。綾乃ちゃんはベッド入っててね。」
「絶対寝てるから!おやすみ!」


* * *

 髪まで乾かして健人がベッドに行くと、綾乃は背中を向けた状態で片側を空けてくれていた。
 そっと中に入って綾乃を抱きしめるために手を伸ばそうとするよりも早く、綾乃が寝返りを打つ。そして健人の方にくっついてきた。健人はそのまま、綾乃の髪を優しく撫でる。

「…絶対寝てるって言ったのに…。くっついてくれて嬉しい。」
「なんでバレてるの。」
「撫でたとき、ちょっと反応して動いたから。」
「…鋭いなぁ。」

 健人は胸に顔を埋めたままの綾乃の髪を撫で続ける。

「…おやすみ、綾乃ちゃん。」
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