無愛想な仮面の下
 何を話そうかと立ち尽くしていると意外にも佐久間さんから話し始めた。

「俺といない方がいい。
 不幸になると言ったはずだ。」

 それは最初のほんの1回だけ。
 あとはどんどん心の中に入ってきたのはそっちだ。

 文句を言いたいのを飲み込んで今一度言ってのけた。

「私は晴れ女なので佐久間さんが呼んだ雨雲くらい吹き飛ばしてみせます。」

 意気込んで言ったのに心になんて響いていなさそうだ。
 不機嫌そうに返されるだけ。

「今日は吹き飛ばせなかったようだが?」

 正しい指摘にぐうの音も出ない。
 けれど……。

「だったら……佐久間さんだって今日張り切ってるってことですよね?」

 俺がここぞと言う時は雨が降るって言っていた。
 不意に思い出して、ただ単に言い返したいだけだった。

 それなのに顔を背けた佐久間さんは反論してこない。
 もしかして…………。

「えっと……今日はここぞって時でした?」

「うるさい。」








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