無愛想な仮面の下
 お店を出ても外は雨が降っていた。
 濡れた路面に街灯の光が当たってキラキラと反射している。

 時折、濡れた道路を走る時の独特の音をさせた車の走行音が聞こえる。

 静かな夜だ。

 突然、佐久間さんは縁石ブロックの上を歩き始めた。
 小学生か!って突っ込みたい似合わない光景。

 よれよれの白衣だとしても大の大人が……。
 お酒は飲んでいなかったから酔っ払ったわけでもないのに。

「危ないですよ?
 いくら低くても雨で滑ります。」

 どうせ聞く耳持たないんだろうとたかをくくっていた。

「じゃ落ちないように手、貸して。」

「はい?」

 手………。

 自分の手をマジマジと見つめていると、その手を握られてすぐ近くまで連れてこられた。

「ちょっと!今!!
 下りましたよね?また上らなくても。
 もう!そんなとこ歩かなくていいじゃないですか。」

 傘と傘との間。
 手と手は繋がれて雨に濡れる。

 冷たいはずなのにそこは熱を帯びて、手に落ちる雨粒が一瞬にして蒸発してしまいそうだった。










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