無愛想な仮面の下
17.前を…
 マンションに戻ってきた形になるのになんだかすごく緊張してしまう。

 玄関で動けずにいると先に行きかけていた佐久間さんが振り返って戻ってきた。
 そして両手で頬を包みあげて優しくキスをする。

「おいで。」

 甘い囁きにいざなわれて部屋へと入ると緊張感が尚更高まった。

 連れらて来られたのは寝室。

 優しく手を引かれベッドに座らされた。

 唇の形を確かめるようにキスをして、そして………。

 佐久間さんが触れる部分が熱くて恥ずかしくて、溶けてしまいそうで………。
 ゆっくりと体はベッドへ沈んでいく。

 触れる指先までもが熱い。
 体中にキスを落とされて脚にも、太ももにまでも………。

 甘い吐息の狭間で不意に佐久間さんが体を離した。
 ベッドの端に座って手で顔を覆ったその表情は見えない。

「どう……しました?」

 私も起き上がって佐久間さんの隣に座る。

「悪い……。」

「また魔が差したって言うんですか?」

「ハハッ。そうじゃない。」

 軽い笑いを吐いても無理しているのが丸分かりだ。

「まだ未遂です。大丈夫です。
 勢いでつい、でも……怒りますけど、………大丈夫ですよ?」

 本当は、大丈夫なわけない。

 けれど大丈夫って声をかけなければ消えて無くなりそうな大きいはずの背中。
 その小さく丸めている背中にそっと頬をくっつけた。






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