無愛想な仮面の下
「……話してもいいか?
 愛美とのこと。」

「…………………。
 佐久間さんが……それでいいのなら。」

 目を閉じて胸の痛みを感じながら佐久間さんが話してくれるのを待った。

「愛美と付き合っていた頃は会えばいつも雨が降ってた。」

 懺悔するように話し始めた内容は想像通りの2人の関係。
 分かっていたはずなのに胸は痛みを増して軋んだ。

「でも愛美は能天気な奴で「サイクリングに行きたい」って言うんだ。
 馬鹿だよな。俺も止めれば良かったんだ。
 そうすればあんな…………。」

 最後まで言葉にならない声は嗚咽を交えて流れていく。

「女なのに、あいつ女なのに傷を……太ももの内側に…………。
 雨で、雨さえ降っていなければ………。」

 傷、責任、そして雨。
 前になされた愛美さんと佐久間さんとの会話に、それから佐久間さんの今までの色々な言葉がぴったりと重なった。

 だからだ。
 太ももになんて触れて思い出さないわけがない。





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