無愛想な仮面の下
18.幸せの形
「浜島さんよく頑張ってるね。」

「はい!ありがとうございます。」

「佐久間の下はきつくない?」

「へへ。まぁ。ぼちぼちです。」

 企画が採用されて、それをきっかけに異動届けを出した。
 佐久間さんの勧めで試作・開発室に。

「いつでも一緒にいたい。」

 ………なんて甘いお誘いではなく「たっぷりしごいてやるから来い」だったけれど「お前は企画より実際に商品を触る方が向いてる」って言われたのは嬉しかった。

 実際に仕事は前以上に楽しいし、何より佐久間さんから得るものがたくさんあった。
 さすが仙人だと唸ってしまいそうなほど。

「佐久間って、見た目や服装に無頓着だったから随分心配したんだけど………浜島さんのお陰かなぁ。」

 無頓着……確かに。
 また佐久間さんを形容する言葉が増えたよ。
 無愛想で不機嫌で、無頓着で?

「先輩。
 何、余計なこと言ってるんですか。」

 噂をすれば不機嫌な佐久間さんが音もなく現れて先輩と一緒に肝を冷やした。

「ハハハッ。
 浜島さんよく頑張ってるなぁって。ね?」

「え、えぇ。はい。」

 先輩と目配せして頷きあった。
 先輩は逃げるようにその場からそそくさと離れてていく。

 でも佐久間さんはなんだかんだ、みんなに愛されてるんだよね。
 もちろん尊敬はされているし、今の先輩みたいに心配もされてたりして。








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