＊ Reality ＊ ～鏡の顔～

コンコン…


「北山君探したよ。早く専務の所へ…えっ？その顔どうしたんだ？」



「はい、室長申し訳ありません。ちょっと非常事態が起きまして、この顔だと専務の前に出る事が出来ません。」


よしチャンスだ


「あの、失礼します。このタオルをお使い下さい。早く顔を冷やした方がよろしいかと思います。」


私は素早く冷たい綺麗なタオルで　秘書課の北山さんの顔をそっと押さえる。


「冷やすと少しは腫れがマシになります。でも、多分内出血しているので、今からもっと酷い顔になると思いますが…」


「ご親切にありがとうございます。助かりました。」


「困ったな。専務の仕事がストップしてしまうな。」


「あの、少しよろしいでしょうか？私、実は秘書検定を持っていますし、実務経験もあります。北山さんの顔が元に戻る間、ヘルプでお仕事をお手伝いしましょうか？」


「君、秘書検定を持っているの？」


「はい、秘書検１級と語学は英語、フランス語、中国語、ロシア語、ドイツ語なら話せます。」


「それ本当なら助かる。北山さんフランス語が得意だから、今日の専務のお客の通訳頼みたかったんだよ。」


「あなたすごい人なのね。私の代わりに室長、非常事態のイレギュラーお願いしてもよろしいでしょうか？」



「ああそうだな。お願いするしかないな。名前を聞いてもいいかな？」



「はい、水瑠　胡桃(みる　くるみ)です。」



「上から読んでも　下から読んでも、みるくるみ。これって、計算？狙ってる？」



「さぁ、親に聞いた事はないんですが、どうなんでしょうか？」


(そんなの、偽名に決まってるじゃない？この人、室長？案外チョロいみたいだ。私の本名はダサいから嫌なのよ。だから、内緒よ。)



「早速なんだけど、水瑠君着替えて秘書課に来て欲しい。私服はあるのかな？」



「はい、シンプルなニットの上下ですが…」



「この際服装は目を瞑ろう、着替えて来て。」



「はい、では失礼します。」



私はトイレを後にし　更衣室に向かった。