ヴァーチャル・リアリティ
喧嘩がはじまりそうな、不穏な空気が流れていく。


それでもあたしは2人の間に割って入ることができなかった。


さっきの映像のせいで、まだ全身に倦怠感が残っている。


口の中だって気持ちが悪くて、とにかく一刻でも早くゲームを終わらせてしまいたかった。


「そもそもこのゲームのチケットを用意したのは陽大だったよな」


「はぁ? 懸賞で当たったんだって言っただろ!?」


「それってなんの懸賞だよ? 本当にそんなものがあったのか?」


「なんだよお前、俺を疑ってんのかよ!」


2人の小競り合いが激しさを増す。


あたしは周囲を見回してため息を吐き出した。
< 107 / 220 >

この作品をシェア

pagetop