ヴァーチャル・リアリティ
まだ暖かさを残したその肌に、一抹の期待が過った。


首を切られたってすぐにはしなない。


止血すればきっと助けることができる!


あたしは自分の服を脱ぎ、陽大の首元に押し当てた


それでも陽大は反応を見せない。


「陽大、陽大目を開けて!」


呼んでも、声をかけても陽大はピクリとも動かない。


「ごめんね。こんなハズじゃなかった! こんなのおかしいよね。犯人なんていない! そうだよ、きっと陽大の言う通りだったんだよ!」


言いながら、次から次へと涙があふれ出してきて止まらなくなった。


こんな建物、あたし達が準備できるハズがない。


冷静に考えればそのくらいわかることだった。


それなのにあたしはチケットを準備してみんなに声をかけた陽大が犯人だと思い込んでしまった。


それこそ、このゲームセンターがあたしたちに見せていた幻想だったんじゃないか。
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