ヴァーチャル・リアリティ
クラスメートたちが全員教室を出て行っても、あたしだけはいつまでも自分の机に座ったままだった。


帰りたくない。


その感情が体中の動きを支配していた。


「あれ、まだいたのか?」


その声に視線を向けて、あたしは息を飲んだ。


そこに立っていたのは小学校時代の陽大だったのだから。


「あぁ……」


あたしは曖昧に返事をして下を向く。


『一緒に帰ろう』なんて言われたんじゃたまったもんじゃない。


そう思ったのだけれど


「俺の家、来る?」


意外な一言に顔を上げていた。
< 162 / 220 >

この作品をシェア

pagetop