ヴァーチャル・リアリティ
「え?」


「お前ばあちゃんと2人暮らしなんだろ? 家、寂しいのか?」


そう聞いてくる陽大にあたしは心底驚いていた。


クラスメートに自分の家庭事情を話したことは1度もない。


それでも、なにか感づいて気にしてくれている仲間がいたのだ。


そのことが嬉しかった。


「別に……寂しくは……」


だけど素直にはなれなかった。


本当のことを言えばどうなるかわからない。


家での仕打ちが増すか、それとも両親のようにお婆ちゃんまで自分を捨ててしまうのか。


いっそ捨てられた方が楽だったのかもしれない。


だけど、産れた時からそんな環境にいた映像上の自分には、そんなこと考えつきもしないことだった。
< 163 / 220 >

この作品をシェア

pagetop