【完】キミスター♡

貴方の中にある焦燥

【其処】は、真っ暗な闇だった。 
私は何かを掴もうとして一歩前に出て、そのままざばんっと水の中に放り込まれる。


怖い……。

そう思って藻掻くけれど、体に上手く力が入らずゴボゴボと沈んで行った。


苦しい。
息が出来ない。

なんとか上を見上げるけど、私の体はどんどん深い闇の淵に追いやられていく。


緋翠…!
助けて……!

声にならない叫びを上げて、ぐっ!と手を突き上げた。

「海夏!」

「ひ、すい…?」

「凄いうなされてた。平気?」

「ど、して…?」

さっきまでの息苦しさからか、私の声は酷く掠れていた。
そして、夢かうつつか分からないこの状態で、私の手をぎゅうっと握っていてくれた緋翠の体温さえも、私の中には入り込まない。



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