【完】キミスター♡
不安は不安をどんどん広げて、胸の真ん中に黒いシミを次々に作っていく。
緋翠は、どうしてあんなにも自分に自信がないんだろう。
他の誰よりも素敵で、他の誰よりも男らしくて、私には勿体無いくらいの人なのに。


「あー…私のほうがほんとネガティブ思考だよ、これじゃあ」


会っていても、ここ最近じゃ凄く不安で。
でも、こうして会わないでいる時間はもっと不安で。

会いたくて、恋しくて…こんな時物凄い好きなんだと思い知らされる。


そんなことを思いながら、何を見るわけでもなくその場に置いてあったタウン誌に目を通すと、近々近所の神社でお祭りがあるってことが書いてあった。


これだ!


私は、ガバッ!と起き上がると先程投げ出したスマホを掴んで、なんの迷いもなく緋翠の番号をタップする。


1…。
2…。
3…。


ほんの少し緊張する瞬間。
コールが長くなれば、どうしようもなく声が聞きたくなって、仕方がない。


「…もしもし…?海夏…?」

「緋翠?久しぶり…」

「うん…久しぶり」

なんで、通話するだけでこんなに気持ちが高揚してしまうんだろう。

それは、好きだから?
それとも、本当に久しぶりだから?

「あのね?…あの…今度の日曜日…空いてる?」

「…うん。空いてるけど…何かあった?」

「うちの近所の神社でお祭りがあるの!だから緋翠と行きたいなって」


そう言うと、スマホの向こうで、緋翠が少し微笑んだのを感じた。


あぁ、やっぱり。
私、緋翠が好き。

「いいよ。一緒に行こ。…楽しみにしてる」

「うん!じゃ、じゃあ、それだけなの、ごめんね?用件だけで。じゃ…」

「あ…海夏…」

「ん?」

「電話、ありがと。俺も声聞きたいと思ってた」

「…っ。う、うん。じゃあね」


つー。
つー。
つー。


あの…切り際のデレ台詞はだめでしょー!

あ、やばい。

顔がニヤけて仕方がない。
どうしよう。


そう思って、両頬に手をやってから、私はベッドにダイブして声にならない悶え声を上げた。




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