家族でも、幼なじみでもなくて。
「本当は、父さんが決めた相手と結婚なんてしたくない。優衣ちゃんと約束したんだ。大人になったら本物の指輪をあげるって。もし、優衣ちゃんが僕のことを好きになってくれたら、父さんに交渉できるのに…嫌われたままだった…だから、無理だ」

「そのために先延ばしにしてもらったのか?」

「そうだよ。でも、意味がなかったね」


陸矢はフッと寂しそうに笑った。


どうして気づかないんだ?
鈍感なのか、相手が見えていないのか。

……両方だな。


「陸矢」

「ん?」

「お前が思ってるよりも優衣は嫌ってないよ」

「慰めてるつもり? まあ、いいけど」


もっと素直になれば楽なのに。

優衣も、陸矢も。

……俺も、か。


「1人で抱え込むなよ。俺だって話を聞くことくらいはできるんだから」

「うん、ありがと。バイバイ」


笑顔で手を振る陸矢は、今にも消えてしまいそうだった。



次の日、陸矢は学校を欠席した。


理由は薄々気づいていたけど、
今はそっとしておこうと思って、なにも連絡しなかった。


俺はそれをひどく後悔した。
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