妻の知らない夫の時間
第4章
さて瑠璃子は前途多難だ。
と言ってても仕方ないので、次の案だ。
陸男の元上司斉藤さんは全くダメだったので、次の上司にいくことにした。相談者Bだ。

以外や、陸男が電話するとやわらかく対応するじゃありませんか。
元上司田口さんは陸男から瑠璃子に電話を替わって話してくれた。

けっきょく、「もう旦那さんがその女に会わなければいいんでしょ。」
「そうです、その為には第三者がどうしても必要なんです。キッチリと二度と会わないよう約束させる人。その為に考えにかんがえて、田口さんにお電話させていただいているんです。やっていただけますか」
単刀直入に聞く瑠璃子。
そうするとやっぱり話を濁したくなる素振りの田口だ。
アーヤッパリ今回もダメか。悩んだ末だ、そうはいくか。
「田口さん、これはたいへん難しい問題ですよね、勿論即答でなくていいんですよ、どうぞユックリ考えていただいて御返答願えますか」
またまたそこで、陸男に電話をかわりきょうの所はそこまでで、いちおう、電話はきった。
斉藤さんと同じようでもまあしかたないか、でも田口さんは感触がよかったから今夜は安心して久しぶりにゆっくりねようっと、、、。
  ある日めずらしくAからメ-ルがはいった。Bさんが血圧高くなったのは、アンタたち夫婦のせいです。それからBさんが奥さんに会った時「自分をぶってもいいですよ」といった話は、Bさんにきいたら「言ってない」そうです。

陸男が瑠璃子からきいた「ひっぱたいていいですよ」ばなしを陸男はAにメールしたらしい。どおしてその言葉だけに、ふてぶてしいAが反応してBに確認の電話を入れたのかは定かではないが、Bだけコソコソと瑠璃子に会っていち早く自分だけ謝罪したこと、そして、ひっぱたいていいから許してよ、というシチュエーションが許せなかったのだろう。
Aはすごい勝気だ。
ただ「全てについてごめんなさい、そしてお宅のだんなさんとは浮気関係ではありません」、といえばこんなに10か月も長引かないものを。
幼稚で負けず嫌いだからそれがいえないのだ。

考えた末陸男はA、Bにメールした。
Bには「Aがアナタの血圧が高いのは我々夫婦のせいだと言ったこと、ひっぱたいていいですよ発言の是非をきちんとただすこと」。

Aには、やはり「不調はお互いさま、医者でもないににBの血圧が高い、を我々夫婦のせいにするのは脅迫。引っぱたいていいですよ発言の真実等,,,」
さてこれで、Aは反応してくるか?いやダメだろうな、今まではたいてい着信拒否か,
無視。自分が頭にきた時だけSMSでいいたいほうだい。

血圧高いBがどういう風の吹き回しか瑠璃子に約束したどおり電話してきた。とても元気だ。
71歳の癖に、「自分は本当にひっぱたいていいですよ」、とは言っていないと、強く主張。まあいいや、たいしたは発言でないし、たしかに言ったのに老人だから忘れたのであろう。Aにはそこまで瑠璃子に屈服したと悟られるのは辛いんだ、フン卑怯者目、
「これは水掛け論ですから、とにかくAにはお互い自分はコレコレが真実だと思っている、と言っておいてくださいね」と瑠璃子はBに釘をさした。

この電話ではおもいがけないことをBが口ばしった。
「もともとAと私Bでこういう街歩はやっていたんですよ。途中から陸男さんが加わった」
エッそれじゃあ―まるきり夫、陸男は女たちにだまされてたんじゃないの。
陸男は瑠々子にあれほど「コノ街歩きグループは俺が作った俺のお気に入りのグループ、名前さえ付けようと思っていた俺のもう一つの世界。暗黙の了解で俺の意志ですぐ集まった俺の女たち、あの女たちだったら絶対俺の所にきてくれる、これからは一日だ。Bの狭窄症が悪化するまで続けたい」
と自慢さえしていたのだ。

バカみたい、自分が女たちに便利に利用されて、安全パイ男としてリ-ダー役させられて使いまわしされているのに気ずかず本気でリーダーのつもりでいたなんて、、、
陸男をなめるだけなめて逃げていった女たち。
そして「すべて陸男一人が悪い、誘ったのは陸男だ、私たち女はただ誘われただけ」をくりかえす。卑劣極まりない。これは鶏が先か、卵が先か、の世界だ。最初は女が陸男を誘い、次は陸男、女たちはまた連れていって、を繰り返す、ドッチも合意してたんだから同罪だ。
例えば、万引き、誘ったやつだけが悪いか、いや同意して犯罪やったやつは全部同罪だ、
あー、それにしてもしっかりしてよ、陸男。頭は良かったはずじゃないの。今じゃ、とんでもない愚か者、瑠璃子はそのバカ陸男の妻だ、もっとくやしい。
 ここ二三日の動きを見てみよう。
何と年寄りBが瑠璃子に急に電話してきて、「もう一切自分らは悪くなく、われわれA、Bを誘った上司だけがすごく悪いので、そちらが何を言ってきてもメールも電話も一切無視する」と伝えるものだった。
瑠璃子が憤ると、陸男は、「これ以上お前が騒いでなんの意味があるんだ、いいかげん収めろ」

ああ、これじゃー、まだまだ陸男も含め悪党三人組のままじゃあないか、三人で瑠璃子一人を苦しめている。三人とも悪党なんだからサッサと謝罪しろ、償え。

女たちの事を「やり逃げ野郎」、というのだろう。こちらが「貴方たちのせいでうちの夫婦関係も家族もすべて破綻した」、とうったえてもなんの罪悪感もなく「上司が全て悪い」の一点張り。
夫も自分も張本人の一人だから、女たちにオオアマ、瑠璃子一人がもんどりうっている。

瑠璃子は最近いろいろ先を考えた。もうこの世は夫に裏切られて終わったからあの世にかけよう。
そこでおもいついたのがお墓だ。子供たちは瑠璃子の子育てがよかったせいでちゃんと独立している。
瑠璃子がそだった故郷、丁度、瑠璃子の家の畑だったところが今や、最新の墓地として大々的に売り出されている。そこを自分のお金で買い、「すこしずつ働いてためたお金をあてよう。文句ないだろう」
そこは古里の墓もちかくにある。瑠璃子が死んだらそこにうめてもらい、瑠璃子自身、両親の子供に戻ってあまえてぬくぬくあの世生活を満喫しょう。

ということでさっそくお墓見学にいき、母に話したとたん、実家から、
「それだけはヤメテくれ」、とクレームがついた。父が兄弟姉妹の墓をその辺に買ってやって死んだものだから、事実上、実家が墓守状態になっている。これ以上負担を次世代にのこすな、というわけだ。

そりゃーもっともだ。父もいいと思ったかどうか知らないが罪なことをしたものだ。
この案は瑠璃子のまちがいでした。だからすぐ取り消しますと実家に伝えた。
だって陸男の浮気の矛先を実家に向けて逃げるのは瑠璃子も卑怯でした。

こういう風に人間的に卑怯になったのもすべて女たちと夫のせいだ。

瑠璃子は今北海道への旅支度をしている。
一人か?って。
いいえ陸男と一緒です。しょうがないじゃないですか?だって瑠璃子はもう若くなく病気がちなんだもの。孫も子供もかわいいしね。
親友洋子いわく「男はずるく自分がって。」
瑠璃子の信頼するもと、先輩いわく。
「瑠璃ちゃんの旦那さんて幼稚なんだな、そして瑠璃ちゃんの事を大切にしてないんだな」俺のプロポーズをことわったからこうなったんだぞ、とはいいませんでした。

雄大な北海道から帰っても多分問題はそう簡単には解決しないでしょう。
だって人間はそう簡単ではないし、ほら、瑠璃子は御存じの通り筋金入りのがんこ者ですから、、、。
でも一歩だけ歩みだしたくなったのです。
     完
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