7・2 の憂鬱




「お疲れさま。今日も残業なんだ?」

終業時刻を30分ほど過ぎ、わたしが休憩スペースの自販機で飲み物を選んでいると、廊下側から女性の声がした。

「松本さん、お疲れさまです。あと1・・2時間くらい残ります。なかなか終わらなくて」

わたしは振り向いて答えながら、カフェインレスのお茶を選んだ。
ガタン、という音がして、それに呼ばれるように松本さんから自販機に体を戻す。
さっきまで部署内にいなかった松本さんは、おそらく外から戻ったばかりなのだろう。

「新しいチームの立ち上がりは、みんなバタバタよね」

やんわりと同情を映して言ってくれた。

松本さんは戸倉さんが任されたチームには参加していないけれど、同じ部内なので、一連の流れや状況なんかは筒抜けなのだ。
新しいチーム発足にあたり、デスク替えはあったものの他部署から加わったメンバーもおらず、一見は、ただのデスク位置交換だった。
けれど、仕事内容は大きく変わり、やらなければならないことが後から後から出てくるので、連日の残業風景にもすっかり慣れてきていた。


「そうですね」

わたしが相槌で返すと、松本さんは意味ありげに笑った。









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