7・2 の憂鬱
「でも、白河さんがそんな顔してるのは、残業続きのせいじゃなくて、戸倉さんがいないからじゃない?」
クスクスと、嫌みではなく、松本さんはどこか楽しげだ。
「そんなこと・・・ありませんよ」
控えめに否定はしてみたものの、実際は図星中の図星だった。
だって、戸倉さんがフランスに出張してから、もう2週間が経っていたのだから・・・・
もちろんメッセージやネットのテレビ電話なんかはフル活用しているけれど、触れられない物足りなさは日毎に増してしまうのだ。
触れたい、触れられたい、いつもみたいに優しく頭を叩かれたい、髪を撫でられたい、そんな想いが浮かんでは、わたしの胸を騒がせていた。
・・・ずいぶん贅沢になってしまったものだと思う。
以前は、ただ同じ職場で働けたらそれでいいなんて考えてたくせに。
今は、毎日触れていたいと願ってしまう自分がいるのだから。
「でもやっぱり、いつもの白河さんとはどこか違うように見えるわよ?戸倉さんがいないせいじゃないの?」
松本さんがからかうように訊いたとき、
「あ、松本さん!探してたんですよ。あれ、白河さんも一緒だ」
松本さんよりは後輩だけどわたしには先輩の男性社員が声をかけてきたのだった。